逢い死て


「ごめん心織、ちょっと、トイレ行ってくる」

「おー」


腕時計にちらっと目を落とすと、時刻は午後6時過ぎ。結構長く話し込んでしまった。途中から麻雪の話が面白くて、夕都のことを忘れていた。こんな時間を長く過ごしたいと思った。麻雪のように毎日楽しく生きたい、私は彼女と逢う度々にそう思うのだ。


グラスも、タルトがどんっと乗せられた大きなプレートも空っぽになっており、何もすることのない私は、何気なくガラスの外に目をやる。

少し減った人通りをじっと見つめる。腕を組みながらゆったり歩くカップルだとか、家族連れだとか、時計を見ながら急ぎ足のサラリーマンだとか、世の中にはたくさん人がいる。そういったことを考えることは、結構好きで。――気持ちが明るくなるから。





( ―――え?)


店から少し離れた通りを過ぎてゆく人の中に、在った思いがけない光景。

思わず私は、ガタン、と椅子を引いた。





今朝見た、

白いYシャツに、チノパンの――


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