逢い死て


メールを見てすぐ、文句を言ってやろうとアドレス帳を開いた。悔しすぎて。

『ごめん!バイト長引いてる。勝手で悪いけどまた今度にしよ。連絡遅くなってごめん;ω; それと今日はバンドの奴らが家来るから。ごめんな。』



発信ボタンが………押せない。どうしても。――あの光景を見てしまったから。

確信は、してた。きっと来ないのだろう、と心奥では。でも来るって信じたかったから、待った。遅れてもちゃんと来て、誠心誠意で謝ってくれたなら多分許していただろう。

けれど、そんな期待は見事に裏切られた。

――あんたのバイトは女の子と腕組んで歩くこと?長引くって何?


涙が溢れる。

悲しい、よりも悔しい。苦しすぎて、情けなさすぎて。

人を散々待たせた上に、約束をすっぽかすような、人として最低なヤツを好きだと思っていた自分が。

無神経に、謝罪メールに顔文字をつけてくるような、平気で嘘を吐くようなクズ野郎を待っていた自分が。


ホント、情けなさすぎて泣けてくる。

なんであんなヤツの為に、私は……。足が痛いのを我慢して、じりじり詰め寄ってくる不安に耐えて、信じたくて信じて待って。

きっと今頃、あいつは笑っているのだろう。人の気も知らないで。私の知らない世界で、私の知らない子と。



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