逢い死て
今まで感じたことの無い程の屈辱。
知らなければ良かったのかもしれない。夕都が浮気しているだなんてこと知らなければこんなにも辛くはなかった。
するならするで上手く隠し通してほしかった。知らないままで笑えていたなら、うわべだけの幸せを私はすべてだと思い込んでいられた。
こんなにもみじめな思いをすることはなかった。
怒りと、悲しみと、憎しみと。
私のナカに、土足で踏み込まれて、黒く粘度のある穢い液体をぐちゃぐちゃに塗り広げられたような、言い表し様の無い不快感。
涙に濡れた瞳で、携帯のディスプレイを見つめる。あいうえおの順で分けられている、夕都とは違ってスクロール不要なアドレス件数。
不意に、あの囁きが聞こえたような気がした。
――忘れさせてあげる。
それは、今の私にはあまりにも甘美な囁きであった。