逢い死て
重ね合わせ
「もう、やめとけば………?」
素足を撫でるカーペット。脱ぎ捨てたストッキングが縮まって転がっている様はまるで肉塊。
ガラステーブルには空になったビール缶や、チューハイ。もう三つも空けたのにも拘らず、たったいま飲み干したそれを無造作に積んだ。
「すみません、放っておいてください」
制止を振り切って、軽くなったコンビニ袋にまた、手を伸ばす。
手当たり次第に、買い物カゴに放り込んだアルコール。普段お酒を飲まない私は、それらがどのような味がするのかなんて全く知らなかったけれど、とにかく放り込んだ。
夕都と落ち合う筈だったあの場所で、私は―野上圭介―にコールした。愚かな行為だと自覚はしていた。
夜に、男の人と逢うということに、どのような可能性を孕んでいるのか、理解していないほど子供じゃない。
けれどそれはそれで良かった。私はどうしようもなく夕都にうんざりしていたし、綺麗事を並べられるほど純粋でもなかった。