逢い死て
「酒、強いの?」
勝手に呼びつけて、他人の家に上がり込んで、お酒を呑みまくる女を前にしても、野上圭介は不快そうな顔も見せない。
「別に、強いとか、弱いとかじゃなく……あまり呑みません」
喉に異常なほどの熱を感じた私は、いったん呑むのを止めて、缶をテーブルに置き、野上圭介に視線を合わせた。
私を射抜くかのようなまっすぐな視線。その目力に圧倒されて、思わず体がびくりと跳ねた。
「で、どうしたいの?
オレを呼んだってことは、つまり、そういうこと?」
じわりと。微かに距離を詰めようとする前のめりの姿勢に後退する。
私が此処に居ること自体、夕都に対する裏切り行為だ。
別に野上圭介とそういうことがしたくてコールしたわけじゃない。そして家にまで上がったわけじゃない。ただ、手っ取り早く近くに甘えられる場所が作られて、どうしようもなく誰かに甘えたくて、それだけで。
けれど、それはもう、そういうことなのだ。
たぶん、私は覚悟してはいる。
だから今ゆっくりと身体の緊張を弛ませ、抱き締められる準備をしているのだろう。