逢い死て


仕方なく奥の方へと足を進めると、じろじろと視線を感じた。当たり前だ、周りを見渡してみると、私みたいに地味な格好をしている人なんて一人もいない。完全に場違いだ。

椅子は全部埋まっていたので、仕方なく壁にもたれて立って観ることにした私。

前方にいるスキンヘッドで顔のあちこちにピアスをした男が、私を訝しげにじっと見てくる。

並大抵でない居心地の悪さを感じながらも、ステージの方に目をやる。

夕都の出番は7時からだと聞いた。現在6時55分。今ステージで歌っているバンドの次なのだろう。

ライヴハウス内の盛り上がり様は普通ではなかった。皆、跳び跳ね、叫び、歌い、狂っていた。

私には到底わからない世界だと思った。早口すぎて何を歌っているのかわからないようなこの音楽よりも、クラシックとか洋楽なんかの繊細な響きが好きなのだ。



< 3 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop