逢い死て
躊躇いがちにゆっくりと近づいてきた指先が、いきなり力強く顎を掴んだと思ったら。
荒々しく唇が押し付けられた。
夕都のぬるめな温度よりも、断然に熱いそれに、身体の芯がじわりと疼くのを感じる。
舐め回される上唇。掻き回される唾液。這い回り、暴れ回る、ざらついた熱い舌。
夕都じゃない。それだけで冷めそうになってしまう自分を振り切るように、ぎゅっとしがみつけば。
強く背中をまさぐられ、抱き締められた。
「…酒くさ」
すっと唇を離した野上圭介が、そう言って笑った。その笑顔は、ふわふわと浮かんでしまいそうなくらいに柔らかかった。
ああそういえばこの人は夕都と同じバンドをしているのだと、思って、
―バンドの奴らが家来るから―
どうしようもなく胸が軋んだから。私から、ぐちゃぐちゃに混ざり合った唾液で濡れたそれを思いきり、押し付けた。