逢い死て


ゆったりとしたテンポが、だんだん加速して、奥のドラムも前方のベースも激しさを現してくる。
夕都の声は、力強くて、直球な歌詞に心臓を鷲掴まれる感覚がした。


『愛してる』とか『一生離さない』とか、夕都の口から初めて聞いた。夕都の目線は真っ直ぐ上を向いている。私と夕都の目線は交わることはなかった。



夕都のバンドが退場してすぐ、私もライヴハウスを出ようとした。けれどある言葉が私の足を止めた。


「ユウト、かっこよかったねー!ヤバイね!彼女いるのかなぁ」

「あんなかっこいいんだからいるんじゃない? でぇーも、いてもいなくても、あたし狙っちゃおうかなー」


そう言ってくすくす笑う女の子達。ちらりと見てみるとその子達は、私とは違ってこのライヴハウスに馴染んでいて、大人っぽくて可愛かった。

知らなかった。夕都って結構人気あったんだ………。私の知らない、馴染めそうにない、この世界で………。



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