逢い死て


なみなみとメロンソーダが入っていたグラスが空になる。かといって何もすることのできない私。情けなくて、泣きそうで。


「ちょっと外出ない?」

ちょうど夕都が歌い終わったとき、突然、耳元で聞こえた声。私はびっくりして横を向いた。

いつの間にか私の左隣の女の人は入れ替わっていたようだ。私に話しかけたのは、派手な茶色の髪の男の人で。当然、見知らぬ顔だった。

「居辛いでしょ?」

そう言ってにっこりと笑うこの人が天使に見えた私は、思わず頷いていた。

微笑みを浮かべたまま、男の人は何の躊躇いもなく私の手首を掴んで立たせ、「ちょっと通して」と言いながら、テーブルとソファの間の狭い空間を広げた。

掴まれた手首に痛みはなかったけれど、突然の強引さに驚く。

ドアに辿り着き、部屋を出ようとしたとき。パシッと、私のもう片方の手首を、熱い手のひらが掴んだ。


「ケイ。心織(しおり)どこ連れてくんだよ?」


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