逢い死て
それは夕都だった。おどけた口調だけど、少しだけ怒りを孕んだ声色。
内心は嬉しかった。けれど、後ろを振り向けなかった。きっと夕都の背後の一部の女の子達に槍のような視線を向けられる。空気のように扱いつつも、露骨に私を夕都からだんだん遠ざけたのだから。
それに、前を通り過ぎるときにちらりと見えたのだから。――女の子が、身体をぴたりと密着させ、夕都の膝に手を添えているのを。
夕都のそばにいたい。けれどこの空間にはもういたくない。――
嫌なのに何も言えない自分に腹が立つから。
「………トイレ、だってさ。オレも行きたいと思ってたからついでに」
「ふーん。心織、早く帰ってこいよ、もうすぐ帰るから」
舞い上がった私の気持ちは、本当に一瞬で突き落とされた。「うん!」という私の返事が、
「えーー、ユウト帰っちゃうの?帰んないでよー」
「そうだよー、ユウトがいなくちゃつまんない!まだ10時なってないよ?」
………掻き消されたから。