異人乃戀 短編集
湖阿が戻ると、咲蘭と鷹宗が少し離れて座っていた。
「二人なんて珍しい」
陸丞が言うと、鷹宗は立ち上がった。
「こいつに待ってろって言われて待ってただけだ!」
鷹宗と咲蘭は仲が良くは無いらしい。湖阿は二人が話しているところを見たことが無い。
仲が悪いというわけでもなく、ただ鷹宗が咲蘭のことが苦手といった感じだ。
「いい加減慣れた方がいいと思うけど」
陸丞が鷹宗の隣に座って言うと、鷹宗はうるさいと言うと、そっぽを向いた。まるで子どもだ。
「お茶どうぞ。お菓子もありますよ」
湖阿は咲蘭からお茶を受け取ると、陸丞と志瑯に渡し、座った。
「志瑯も座ってよ」
志瑯に鷹宗と湖阿の間に座るように促すと、お茶を一口飲んだ。
誰かと月見をしたことなんて無い湖阿は、今夜の月見は一生の思い出になるだろうと思った。
「湖阿様、お菓子食べますか?」
「うん、食べる」
「……太るな」
「ちょっと、今なんかボソッと言ったやつ!ってか、鷹宗!」
「何だよ?本当の事だろ?忠告してやっただけだっつーの」
「いらないこと言わないでよ!」
「まぁまぁ。鷹宗、あんまりいじめると……あのことバラす」
「……」
「志瑯もいる?」
「いや、お茶だけでいい」
「そう?お茶もっとどうぞ」
「……ありがとう」
「……うん!どういたしまして!」
-終-