異人乃戀 短編集
この世界では飲酒の年齢制限が無い。楓が湖阿に一度酒を勧めた事があったが、倭では二十歳になってからしか呑めないからと断った。そして、両親が全く酒を呑めないということも聞いていた。
「こ、湖阿ちゃん!」
「んー?なぁに?」
湖阿は首をくてんと傾げると、そのまま志瑯の方に倒れた。志瑯は酔っ払った湖阿を見て何か思案したかと思うと、湖阿により近付いた。そして、湖阿の体をこれ以上倒れないように支える。
楓は志瑯の思わぬ行動に、感心すると同時に今後の自分の行動に悩んだ。
このまま二人の側にいるか、離れるか……。
「ねぇ、しろぉーねむたいー」
そう言って、志瑯の首に手を巻き付けて抱き付く湖阿。更に、志瑯の体に頬をすり付けている。
楓が志瑯を見ると、目が合った。
楓は迷った。湖阿の名誉の為に引き剥がすか、志瑯の為にこのままにするか……。
感情は読み取れないが、嫌がってはいない。志瑯は湖阿を気に入っている。むしろ嬉しいはずだ。
楓は迷った。湖阿の名誉の為に引き剥がすか、志瑯の為にこのままにするか……。
酒によって紅潮した顔と、潤んでとろんとした瞳。甘い声で甘える湖阿なんてそうそう見れるものではない。女の楓でも胸が一瞬高なる程、今の湖阿は色香がある。
「んーだっこして?」
楓は迷った。志瑯の理性が保てなくなる前に湖阿を強制退場するか、これを好都合とそのままにするか。
自分一人では無理だと思った楓は、誰か助けを請おうとしたが、鷹宗含め年長者は酔っ払ってる。
他は……咲蘭は桜の花を追いかけてふわふわしている。珮護は不自然な程に桜を見上げていた。一人わざとらしい感嘆の声をあげながら。
楓が腹をくくって湖阿と志瑯を見たが、すぐに目を反らした。何故か湖阿が志瑯の膝の上に座っていたのだ。
「……飲酒前の湖阿ちゃん、あたしにはあなたを止められないわ」
楓は酒が抜けてしまった湖阿がこの状況を知った時のことを考えた。きっと三日は部屋から出なくなるだろう。志瑯には七日以上恥ずかしくて会えなくなるかもしれない。
その時、志瑯が湖阿を所謂お姫様だっこをして立ち上がった。
「し、志瑯様?」
もしや理性の限界か?と楓が声をかけると、志瑯は屋敷の方へ歩いていく。
楓はいくらなんでも酔った女性を……と思いながらも、とめることも付いて行くこともできなった。
志瑯が屋敷の中に消えるまで、楓は考えた。湖阿を紳士的に愛している志瑯が、媚薬を混ぜられてもなお欲望を制した志瑯が何かするわけがないと。
楓は、二人の後を追いかけた。既に門には二人の姿はない。
湖阿の部屋に足を運ぶと、布団の上に湖阿を横たえ掛け布団をかける志瑯がいた。
志瑯は、楓の存在を知ってか知らずか、寝ている湖阿の額に口付けをすると傍らに座った。
楓は安堵すると、襖を閉めた。
今日のことは湖阿には言わないようにしよう、そう楓は誓った。
翌朝、湖阿は強烈な頭痛と共に目を覚ました。
「いったぁ……あたし、昨日何かした?」
「え?さぁ?間違えてお酒を呑んで眠ったみたいよ?」
湖阿は納得すると、再度横になった。
後日、珮護から真相を聞いた湖阿は三日部屋に籠もり、十日志瑯を避け続けたのだった……--。
終
「こ、湖阿ちゃん!」
「んー?なぁに?」
湖阿は首をくてんと傾げると、そのまま志瑯の方に倒れた。志瑯は酔っ払った湖阿を見て何か思案したかと思うと、湖阿により近付いた。そして、湖阿の体をこれ以上倒れないように支える。
楓は志瑯の思わぬ行動に、感心すると同時に今後の自分の行動に悩んだ。
このまま二人の側にいるか、離れるか……。
「ねぇ、しろぉーねむたいー」
そう言って、志瑯の首に手を巻き付けて抱き付く湖阿。更に、志瑯の体に頬をすり付けている。
楓が志瑯を見ると、目が合った。
楓は迷った。湖阿の名誉の為に引き剥がすか、志瑯の為にこのままにするか……。
感情は読み取れないが、嫌がってはいない。志瑯は湖阿を気に入っている。むしろ嬉しいはずだ。
楓は迷った。湖阿の名誉の為に引き剥がすか、志瑯の為にこのままにするか……。
酒によって紅潮した顔と、潤んでとろんとした瞳。甘い声で甘える湖阿なんてそうそう見れるものではない。女の楓でも胸が一瞬高なる程、今の湖阿は色香がある。
「んーだっこして?」
楓は迷った。志瑯の理性が保てなくなる前に湖阿を強制退場するか、これを好都合とそのままにするか。
自分一人では無理だと思った楓は、誰か助けを請おうとしたが、鷹宗含め年長者は酔っ払ってる。
他は……咲蘭は桜の花を追いかけてふわふわしている。珮護は不自然な程に桜を見上げていた。一人わざとらしい感嘆の声をあげながら。
楓が腹をくくって湖阿と志瑯を見たが、すぐに目を反らした。何故か湖阿が志瑯の膝の上に座っていたのだ。
「……飲酒前の湖阿ちゃん、あたしにはあなたを止められないわ」
楓は酒が抜けてしまった湖阿がこの状況を知った時のことを考えた。きっと三日は部屋から出なくなるだろう。志瑯には七日以上恥ずかしくて会えなくなるかもしれない。
その時、志瑯が湖阿を所謂お姫様だっこをして立ち上がった。
「し、志瑯様?」
もしや理性の限界か?と楓が声をかけると、志瑯は屋敷の方へ歩いていく。
楓はいくらなんでも酔った女性を……と思いながらも、とめることも付いて行くこともできなった。
志瑯が屋敷の中に消えるまで、楓は考えた。湖阿を紳士的に愛している志瑯が、媚薬を混ぜられてもなお欲望を制した志瑯が何かするわけがないと。
楓は、二人の後を追いかけた。既に門には二人の姿はない。
湖阿の部屋に足を運ぶと、布団の上に湖阿を横たえ掛け布団をかける志瑯がいた。
志瑯は、楓の存在を知ってか知らずか、寝ている湖阿の額に口付けをすると傍らに座った。
楓は安堵すると、襖を閉めた。
今日のことは湖阿には言わないようにしよう、そう楓は誓った。
翌朝、湖阿は強烈な頭痛と共に目を覚ました。
「いったぁ……あたし、昨日何かした?」
「え?さぁ?間違えてお酒を呑んで眠ったみたいよ?」
湖阿は納得すると、再度横になった。
後日、珮護から真相を聞いた湖阿は三日部屋に籠もり、十日志瑯を避け続けたのだった……--。
終