彼女はハラハラ時計
いつもは俺のことを『みよたん』と呼ぶのに。しばらくの間は美吉田警部補と呼ばれることになりそうだ。もしかしたら、もう『みよたん』と呼んでもらえないかも。

「あのだな、藍田巡査長」

「藍田巡査長?藍田巡査長ってなんですかそれ?琵琶湖に行ったら恋人の呼び名まで変わるんですか!びっくりですよ!ああ、びっくり!」

どうやら俺は呼び名を変えちゃダメなルールらしい。了解したよ。俺が全部悪いんだから。

「藍ちゃん、このままじゃ非常にマズイと思う。汚い爆弾の可能性もあるし。藍ちゃんが知り得た情報だけでも教えてくれないか」

「それじゃ、市民の命を護るために申し送りを始めます」

「もう、それでいいよ」

「汚い爆弾の可能性は絶対にありません。そうした仕掛け、それにつながるドラム缶も設置されていませんから。放射性廃棄物が入ったドラム缶が盗難されたのは事実かもしれません。だけど、この現場にはそうしたドラム缶は皆無です。キヤリーボムボムが仕組んだブラフだと思われます」

「そうだな。俺の初見でもそんな感じた。この状況でよくそこまでの結論を導き出したな」
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