彼女はハラハラ時計
どう説明したらいいのか、言葉が見つからなかった。藍田に嘘をついたのは大事な告白前に『不安にさせたくない。口喧嘩をするのは嫌だ』これが俺の正直な気持ちだ。だけど実際にはハズレていた。

それでも藍田の心を癒さなきゃならない。俺は藍田の腕を離しスーツのポケットから、あの御予約確認書を取り出した。

「今の俺を信じてもらうには、不本意だがこの御予約確認書を見てもらうしかないと思う」

「知らない。見ない。読まない」

「いいから見ろ!俺の気持ちを知ってほしいんだ!」

俺は折り曲がった御予約確認書を藍田に読めるよう、彼女の目の前で広げた。

「これって…」

「そうだ!婚約指輪の御予約確認書だ!素材はプラチナで石はダイヤ。オマエの誕生石な。サイズは8号で間違いなよな。本当は来月の誕生日に渡すつもりだったから予約したのは二週間前。…お見合いをする前からオマエへの気持ちは決まっていたんだ」

「サイズは間違ってないけど、私の誕生日は10月だから…あ、なんでもない。でも、お見合いが上手くいったら片桐巡査に渡すつもりだったんでしょ」
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