彼女はハラハラ時計
そんな危険な状態の中、携帯の着信音が鳴る。助けに船とはこのことだ。

「すいません。ちょっと失礼」

「……」

俺は桔梗の間から外に出て携帯に出る。

「はい。美吉田です」

『よう、太志。琵琶湖での釣りは楽しんでるか?』

「山根警部!」

声の主は俺の直属の上司、山根警部だった。警部にも今回のお見合いのことは内緒にしていた。付き合っている彼女、藍田にバレそうな気がしたからだ。警部は悪い人ではないが…口が非常に軽い。

「もちろん楽しんでますよ。さっきも大物を釣り上げましてね」

『ほう。確かに警視監の娘なら大物だろう』

「…いやだな警部。琵琶湖には警視監の娘なんていませんから」

『琵琶湖にはいないだろうけど、花水木とかいうフィールドならいるんじゃないのか』

「……」

ははは…。まさに四面楚歌!

「そこまで事情を知っているなら、なんで携帯を掛けてくるんですか。マズイですよ」

『マズイのはこっちも同じだ。宇尾薬品工場に爆弾が仕掛けられたんだよな。マズイだろ』
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