ため息と明日
私が座っているカウンターの中央よりも左側、一番端より二つ手前の座席のテーブルの上に置いてある、銀色の紙。
「あぁ…1時間前ぐらいに帰ったよ」
私の視線がある場所に気付いたマスターも、主の居なくなった席を眺めて、微笑んだ。
なんだ。
あいつ、まだ来てたんだ。
でも、鉢合わせなくてよかった。
「ホッとした顔、してるね?」
こういう時に、マスターは意地が悪い。
目線を声の方へ戻すと、目の前のダンディーな人は眉をハの字に下げて、苦笑していた。
「だって、かれこれ1年以上会ってないし」
理由はそれだけじゃない。
だって、当然でしょう?
私たちは、キレイな別れ方じゃなかったんだから。