ため息と明日



智樹とは、約2年ぐらい付き合っていた。



年は私より一つ下。



友人を介して知り合った。



この店を初めに紹介してくれたのもヤツだ。



付き合っていた頃は、よく二人でここを訪れていた。



マスターは智樹のことを良く知っていて、私と彼が別れた後も、何かと私たちを気に掛けてくれる貴重な存在だ。







智樹は、私と一緒に居る時は煙草を控えていたから、口が物足りないといつもブラックガムを噛む癖がついていて



この店の中でも眠気覚ましに。とか何とか言ってはガムを噛んでいたのをよく覚えている。



酔いが回って来てる時には、ガムを包む紙を失くしていて、テーブルに配置してあるマナーようのペーパーに包んでは灰皿に捨てていた。




けれど、たまに失くしたガムの銀紙を見つけることがあったのだ。



そんな時、やつは決まってその銀紙で、紙飛行機を作っては満足気に帰り際店に置いて帰る。







だから、あの席を一目見てピンときたんだ。



今日も、その小さな紙飛行機が、静かにテーブルに横たわっていた。



アイツのほかに、この店で紙飛行機を折る男はいないだろう。



30過ぎた男があんな、ちまちましたことをしていると思うと少し笑える。



相変わらず、変なところが子供だ。






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