ため息と明日
「今日、飲み会参加しますよね?佐々木さん!」
「えぇ〜どーしよっかなあ〜」
「そんなこと言わずに!佐々木さんいないと盛り上がらないし!ね?」
「うーん、彼氏に聞いてみてからでいい?」
「もちろん!待ってますからね!!」
残業しながら聞こえてきた部署内のとある会話。
そうか、だから皆今日は早々に仕事切り上げてんのね。
資料作成中のPCから目線を上げて、ふとフロアを見渡すと、残ってるのは数名のみ。
いつもなら、この倍ぐらいはまだ人がいる。
視線を元の位置に戻すと、私は作業を再開した。
秀でた才能もなければ、人望も厚くない。
そんな私でも、この歳まで仕事を続ければ、ある程度のポジションが与えられるわけで...
「仁科、これ今日中に頼むわ。部長が明日の会議でいるって」
まだ、自分の仕事も終わってないのに、また仕事...。
思わず出そうになるため息を上司の前で晒すわけにはいかない。
軽く息を吐き、このなんとも言えない空気を変えたかった。
「_解りました。出来たらデスクの上に置いとくので、確認お願いします。」
助かる。という声なんて、さっさと背を向けて歩き出した人物が発したものとは思えないほど、癪に障った。
私の立場なんて、これっぽっちのもんだ。
NOとは言えない、でもやらなきゃならない。
出来て当たり前。ミスは許されない。
毎日毎日、何かに追われて、日々、疑問が増えて行く。
新しい世界なんて、もう何年も見ていない。
それは、ずっと遠い昔で、夢を見ていた20代前半の頃。
懐かしいはずなのに、もう希望の「夢」も、眠りの「ユメ」もどちらも見れないとこまで来てしまった。