ため息と明日
side Akane
私の部署の上司、仁科サブマネ。
もうそろそろいい歳だけど、未だに結婚する気がないようだ。
普段は、上司だし、さん付けで呼んでるけど、
二人の時はもっぱら、仁科先輩って呼ぶようにしてる。
だってそっちの方が仲良い呼び名ってかんじじゃない?
当たり前だけど、みんなは「仁科さん」って言う。
けれど、そんな中でも、たった一人だけ先輩のことを下の名前で呼ぶ人が社内にいる。
「アヤキ、ちょっといい?」
その澄んだ神ボイスで、仁科先輩を呼びつけた主…伊澤マネージャー
「はい、すぐ行きます」
そして、いつもレスポンスの良いこの掛け合い。
視線を、その根源に向けると、恐らく今
うちの会社が力を入れてる開発について協議しているようだった。
どことなく、だけど、やっぱりしっくりくる二人。
先輩は気付いてないみたいだけど、
仕事の話が終わると、伊澤さんの瞳が先輩の瞳を捕らえるんだ。
「あの、その他はよろしいですか?」
まだ何かあると、勘ぐるのはいつも仕事のことばかり。
違うっての、なんで分かんないかな?
首を振って社内の女性を虜にする、あのキラースマイルを振りまいて、伊澤さんは、大丈夫だよって優しく微笑むの。
もう、このやり取りみてきて、何年経ったってことか。。。
最初は伊澤さんのこと、本気で狙ってたけど、しばらくすると、分かっちゃったんだよね。
あぁ、この人、仁科先輩しか見てない。って
先輩はマイペースでどっちかっていうと、地味にしてる方だけど、
役職も持ってるし、社内の人望も先輩が思ってるよりずっと厚い。
なのに、敢えて目立つのを避けてる気がする。
そろそろ、気付いてあげなよ。
伊澤さんだって、いつまでも呑気にかまけてたら、どこぞの誰かに取られちゃうよ?
最近、先輩が以前にも増してちょっと危うい感じがするから、
あんまり待てない気がする。
私は、見守ることしかできないけど、いつだって先輩の味方には変わりない。
だから、早く、かっさらっちゃえ。
って、どっちに言ってんだかね。笑