ため息と明日
驚いたと同時に、慌てて駆け寄った。なんとなく今来たばかりという感じではなかったから。
皮の手袋をコートの中に入れて、はぁっという吐息も白く、彼は遠くを見つめて佇んでいた。
「伊澤さんっ!すみません、お待たせしてしまって!!」
私の姿を捉えると、向こうも驚いたようだ。
「あれ?早かったね。ごめん、かえって気を遣わせちゃったかな。」
そんなことないと、首を振ると、目の前の人はなんだか照れ臭そうな笑みを浮かべた。
「ごめん、なんか俺、浮かれてんのかな。ありがとう、寒い中来てくれて」
目尻がほんのり赤くなったその表情を見つめた時、こっちまでほんのり温かい気持ちになる。そんな夜が、特別な日になるような予感がした。
冷えるから中に入ろうと、お店の中に促され、私は彼の後を追った。