ため息と明日
都内に住んでいると海を見ることもめったにないけど、連れてきてもらった隣県の港は、観光地でもとても有名だ。
私の田舎は、山と海で囲まれたところ。
小さい頃から山より海が好きで、何か癒されたいときは、よく自転車で10分もかからない、近くの海辺に行ってぼーっと日が沈むのを待った。
都会に出てきてからは、なお一層、海が恋しかった。いつも側にあった景色が今はとても懐かしい。
車をしばらく走らせて、到着したのは港に程近いカフェだった。真っ白の外観に虹が架かった看板が目印のかわいいお店だった。
「うわぁ〜!こんな素敵なところ、よくご存知ですねぇ」
正直、男性の行きつけっていうより、女子の方が好きそうな見た目だったので、思わず言葉をこぼすと
少し照れくさそうに、アヤキに合いそうなお店探したんだ。と彼ははにかんだ。
これは一応、女子というか、女性扱いされてるって認識でいいんだろう。
出だしから思ってたけど、なんか、自分のために考えてくれるって、嬉しい。
感傷に浸りそうになってたところ、お店に入ろうと促され、真っ白な世界へ足を踏み入れた。