ため息と明日
そんな中で、ふと、記憶が蘇った。
今日とは正反対のあの日のことを。
昔、二人で食事中、かなり重めの溜息を目の前で吐かれたことがある。
ご飯を食べるのがゆっくりな私に恐らくイライラしていたんだろうあの人を。
その態度にさらにイラっとした私は、奴に言ってやった。
『そんなに嫌なら、先帰っていいよ』
思いっきりシラケる雰囲気なのに、奴は黙ったまま、私が食べ終わるまで大人しく座っていた。
会話が一言もない、最悪の空気の中で、居心地なんてものは皆無で。
食べ終わって、店を出た時、奴は言った。
「さっきは…悪かった」
彼から謝られたことがほぼ無かったせいか、かなり驚いたのだ。
改めて言ってきたことについても、奴らしくない。
その日以降、一緒に食べる時は、どれだけ奴が私より早く食事を終えても、溜息を吐くことは無かった。
別れた日、最後の晩餐じゃないけれど、本当に最期の食事だったその日ですら、待っていた。私が食べ終えるのを待つことだけは、習慣づいていたのかもしれない。
そんなどうでもいいことを
こんな幸せな空気の中、なんで思い出したんだろう。