ため息と明日
無駄な思い出に引き摺られるのは、性に合わない。
さっき思い出したことを振り払う様に、目の前にいる人との会話と食事を楽しんだ。
食事を終えお店を出ると、伊澤さんにお礼を伝えた。こんな素敵な場所で過ごせたことがすごく嬉しかった。
自分も働いているので、支払いについて自分の分を出そうとすると、やっぱりだが、「しまっておいて。」といつも通り、にっこり笑顔で断られる。
20代の頃とは違うので、これから付き合って行く上で、さすがにお金をずっと出してもらう訳にはいかないと、伝えた。
彼は、基本的に私に対してお金を出させることをしたくないと、これに関してはお互い一歩も引かずというとこだった。
すると、彼は、良いことを思い付いた!とばかりに、交換条件を持ち出した。
たまにでいいから、私の手料理を食べたいとのリクエストだった。材料は揃えておくから、とこれまたニッコリ素敵な微笑みを携えていらっしゃる。
断る理由が無いので受け入れたが、本当にそんな簡単なことでいいのか、再度確認すると、先方はそれが一番嬉しいと、とびきりの笑顔で言われる。
今更だが、人が食べても問題ないものを作れるよう練習しなければならなくなった。。私の料理のレパートリーは、少な過ぎる。
この勝負、彼の勝ちなり。