ため息と明日


いつものように、扉を上げれば、目の前にはバーカウンターがあった。



そこに、一人スツールに腰掛けた男がいる。



長い間会っていなかったのが嘘のように、憂いをおびた表情がすっと、自分の中に馴染んだ。



男の方へ近づいていくにつれ、ヒールのコツコツという音がやけに煩く聞こえる。



歩みを止めて、話しかけようとしたその瞬間、先程まで見向きもしなかった男がこちらへゆっくり振り向いた。



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