木犀草が告げること
蘭という少女
「兄貴!」
あたしが呼べば、兄貴はしかめっ面をした。
折角の美人がもったいない。
「兄貴と呼ぶなと言ってるでしょう?」
形のいい眉をよせて、兄貴は怒った顔も美人だ。
ほんと、あたしと大違い。
あたしはガサツで、行動も大雑把。性格もそんな感じ。
「…そーじにーさん」
「なんですか、蘭」
にーさん、と呼べば、眉間の皺もなくなって、兄貴は笑顔を振り撒いた。
ほんとに美人さんだと思う。
あたしと兄貴、総司は兄妹だ。
正確には異母兄妹。
あたしは詳しい事情を未だ教えてもらってはないけれど、今時、何人も妻をめとることなんて珍しくもない。
それに、血が半分でも繋がっているなら、十分だと思う。
総司が兄貴であることには、何も変わりない。