木犀草が告げること
「よお、あんたが新撰組の沖田総司だな?」
大通りをそれて、わき道に入った瞬間、あたしと兄貴の目の前に、刀を持った男が四人立ちはだかった。
新撰組に恨みを持った浪人だ。
けれど、ちょっと待ってよ、浪人さん。
あなたが見ているのはあたしで、沖田総司はあたしの隣にいる人だよ?
ていうかみれば分かるでしょ?あたしは腰に刀を差していないし。
しかし、相変わらず浪人はあたしばかりを睨みつけてくる。
…まあ、あたしの格好を考えれば、勘違いするのも仕方がない。
「それが何か?」
あたしは精一杯の低い声を出して、浪人をにらみつける。
浪人達は一瞬たじろいだ。さすが、歳三さん仕込みの睨みつけ!
「…ってめえのせいで、仲間が何人死んだと思ってんだ?!」
「離せ!」
浪人の一人が胸倉を掴んできた。
女の子に何をするわけ?まあ、別にいいけどな。
「ふざけてんじゃねえぞ!あ?それに女なんか連れやがって」
その言葉に、あたしは思わず固まってしまった。
ぎしぎしとカラクリみたいに体を必死に動かして、ちらり、と隣を見れば、兄貴の米神に青筋が立っていた。
(あ、やばい…)