木犀草が告げること
「お集まりいただき、ありがとうございます。新撰組幹部の皆々様」
夜も更け、満月が真上へ差し掛かる頃。
広間に新撰組幹部一同が介していた。
蝋燭が揺れる、暗い広い室内。
ぼんやりと橙色の灯りが、周囲を淡く照らす。
「早速では御座いますが、新撰組十一番隊定例報告をさせていただきます」
何卒、御覚悟を。
局長である近藤を差し置き、上座に座る少女、十一番隊組長、沖田蘭は、唇で緩く弧を描いた。
十一番隊。活動は監察にも似たような隠密行動である。
しかし、隠密対象は、新撰組である。
新撰組内の事件、局中法度の違反者、間者の告発――。
完全な中立の立場にある、彼らだが、組織としては基盤のもろい新撰組を確かに支えていた。
そして今日は、十一番隊の定例報告会、つまり、内部告発の日なのである。