木犀草が告げること
「まず結論から申し上げまして、間者が2名、法度の違反者3名、また白黒判断つきかねる人間が5名。以上です。また、法度の違反者3名が十番隊の隊員です。永倉組長、もう少し隊員の行動に目を光らせてはいかがでしょうか」
「…っご忠告、痛み入ります、蘭組長」
永倉が苦々しい顔で答える。しかし蘭は永倉に目もくれず、報告の続きを読み上げていく。
「法度の違反内容は賭博行為です。賭けられた金は軽微なものですが、他の隊士に示しがつきません。かといって、今、人手を失うことは得策とはいえません。よって粛清は免じ、厳重注意のみとすべきでしょう。最終決断は土方副長へお任せします。また、間者につきましては、四番隊と六番隊の者です。そちらは、十一番隊で処分いたしますので、名前の発表は控えさせていただきます。各隊の組長の方には後ほどお伝えします。よろしいですね」
蘭の問いかけに、一同は頷く。しかし、四、六番隊組長である松原と井上の顔に苦渋の色を見せていた。
「また、白黒判断つきかねる隊士に関しましては、引き続き監察を続け、判断がつき次第、報告致します。――以上、新撰組十一番隊より報告を終えます。何か質問がある方はいらっしゃいますか」
蘭は一同を見やり、特に質問や意見もないことを確認し、報告事項が書かれた紙を、そのまま行灯の炎で燃やしきった。