由良さんが呼んでますので
遠巻きに、眺めないであげてよ
彼女が、壊れちゃうよ
矛盾した感情を胸に、あまり荷物の入っていない鞄を肩にかけ、彼女と共に席を立った
「では細木くん、行きましょうか」
「はいっ」
それなのにも関わらず彼女に必要とされるだけで、俺は満足なのだ
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初めて、かもしれない
「由良さん、荷物持ちます」
「え、いいですよ」
「持ちたいんです。持たせて下さい」
あ、そう。ハイハイどうぞ
何故か真剣な表情をして下僕発言をした彼。投げやりな答えと共に肩に掛けていた鞄を細木くんに渡した
「わ、わ!!重たっ」
「ならいいですよ。やはり、自分で持ちます」
「あ、違いますって!普通の女の子が持ち歩く重さじゃないって言いたいんです!」
確かにそうだと思う
だって、彼の鞄なんて紙一枚も入って無いんじゃないの?と言いたいほど軽いのだから。まあ、当然の反応だわ
「由良さんは持たなくていいですからね!女の子なんだから」
オマエがソレを言うのか
天然な彼を見ていると、何故だかツッコミを入れたくなるときが多い
嫌に私の言うことに従順な彼を見て、何から出たのかしらない溜息が、口からするりと抜けだした