由良さんが呼んでますので






私も大抵、いい根性してるな、なんて心の中で呆れて見ながら、目の前の現状に溜息を吐いた




「まあ、いいですよ。今度挨拶に伺います」

「へぇ。だってさネコ会長」




ねこ・・・・?



またしてもワケの分からない単語が耳を掠めた。けれども、此処で好奇心は発揮しないでおこうと思う



だって後悔する予感が半端なく私を襲うから



油断していたそのとき、いきなり私の横に回り込んで、耳元に口を寄せた彼は、少しだけ甘く、だけど低く掠れた声で言葉を紡ぐ




「それで?由良さんの本当の用件はなあに?」



本当に彼は、鋭くて察しがいい



瞬間、言い終えた持田くんにフッと笑って、




「――――うぉ!」

「持田くん」




彼のネクタイを思いっきり引っ張って、私の顔に彼の顔を近づけた



これは交渉。彼の為に、彼が幸せになる為の駆け引きなのだ


別に、失敗したって構わない。それはそれで、また私は彼との時間を増やすことが出来るだけだから




それでもね、私。彼が大事なの




「お願いがあるのだけれど」

「――――――えぇ。いいですよ」



その企んだ顔、嫌いじゃないよ



そんな軽口が叩けそうになるのは、やっぱり細木くんのおかげだ






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