由良さんが呼んでますので
恍惚の表情を浮かべ、うっとりと私の頬に手を添える。な、何なんだ。この人ちょっと不気味じゃないか?
「すみません誰ですか。私に用でもあ、」
「2年の篷秀司(とま しゅうじ)っていうんだ」
「あの、」
「美しい俺のマリア。結婚してくれ」
すみません話聞いて!!!!
お願いだから電波なこと言い出さないでくれませんか。ちょ、ホント!顔近いしっっ
いきなり結婚してくれと真顔で迫るなんて、どんな変人だ。帰ってくれ
「と、篷さ」
「名前がいいなあ」
「しゅ、しゅーじさん」
「なあに?マリア」
マ リ ア は 定 着 し て ん の か
恐ろしい。何だこの人は。怖いぞ、何だか。疑問詞が脳内を占めて、グルグルと回り巡る。こういうときの対処法を、私は知らないのだ
とても愛しいモノを見るような瞳で、私を見る。与えられたことの無い感情を目の当たりして、恐怖なのかよく分からない感情に、身体が震えた
何、これ。こんなもの、向けられたこと無い。怖い、の?嬉しいの?悲しいの?
与えても返されない。逆に、拒絶されると分かっている感情のようで、怖いの?
あの日の自分を見てるみたいだから?