執事ちゃんの恋
第22話




 第22話



「ねぇ、ヒヨリ。ちゃんと聞いている?」

「あ、は、はい」


 慌てて我にかえると、目の前でコウは少しだけ頬を膨らませている。

 ヒヨリは、少しだけ苦笑してコウに頭を下げた。


「申し訳ありません、コウさま。少し……びっくりしてしまったもので」


 それはヒヨリの本心だった。

 慌てたなんてものじゃない、驚いたなんてものじゃない。


 まさか、コウがヒナタに恋をするだなんて……それも、今コウの傍に仕えている執事ヒナタは偽ヒナタであり、中身は自分である。

 まさか、まさかの連続でヒヨリは心がついていかない。

 
 先日、コウが友人宅から帰って来たときのことを思い出す。

 あのとき、寝不足気味のコウはいってはいなかっただろうか。


 恋バナしてて寝不足になった、と。


 そして、その話をヒヨリにしたあとにコウは言い出したのだ。

 ヒナタの妹、ヒヨリに会いたい、と。


 頭が痛くなりそうだ。

 その恋バナをしたときに、きっと友人が提案したのだろう。


 近しい人に応援を頼めばどう? などといわれたのではないだろうか。

 
「……」


 これで、突然コウがヒヨリに会いたいなどと言い出した理由がわかった。

 が、この自体をどう収拾させようか。

 ヒヨリはため息しかでてこなければ、解決策なんて、どう考えてもでてこない。


 正直、この場から即刻立ち去って、今聞いたことはなかったことにしたい。

 右から左へ聞き流してしまいたい。


 ヒヨリは心からそう願った。

 が、そんなに簡単にことが運ぶわけもないし、コウがそのままヒヨリを離すわけもない。




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