執事ちゃんの恋
「ヒヨリって、本当に姿をくらましちゃうのね」
「そうでございますよ、コウさま。お話したでしょう、なかなかヒヨリとは連絡がつかない、と」
「んー、ヒナタがヒヨリを私とあわせたくないがために言っていた嘘だと思ってた」
バツが悪そうに頬を赤く染めるコウに、ヒナタは目を少しだけ細め、チラリと視線をコウに向ける。
「それは心外ですね、コウさま」
「ヒ、ヒナタ?」
ソッとコウの手を取り、手の甲に唇を寄せた。
「ヒ、ヒ、ヒ、ヒナタっ!」
真っ赤になって手を振りほどき離れるコウに、おやと不思議そうにヒナタは首を傾げた。
「どうしてお逃げになられるのですか?」
「ど、ど、どうしてって……」
「忠誠を誓うキスをしようとしたのに」
「!」
肩を竦めるヒナタを見て、ヒヨリは思わずプッと噴き出してしまった。
今までもコウに対して、ヒナタならこういう行動をとるだろう、こんなことを言うだろうということを想像して行動していたが、その上をいく言動ばかり。
もっと大胆に、プレイボーイっぽく振舞ったほうがよかったか、とヒヨリはこっそりと思った。
コウとヒナタのやり取りをあっけにとられてみていた美紗子だったが、いぶかるようにヒナタのスーツジャケットの袖を掴んだ。