執事ちゃんの恋
第24話
第24話
「コウさま……?」
戸惑うヒヨリとヒナタに向って、瞳をキラキラとさせ、手を握り締めているコウは、嬉々としている。
あっけにとられている二人に、コウは嬉しそうにはしゃいだ。
「そうよ! なんで今まで気がつかなかったのかしら」
「えっと……コウ、さま?」
「今までは今までよ。慣習なんて私が取り壊してみせるわ」
フフフと不気味に笑うコウを見て、ヒヨリとヒナタは顔を見合わせて小声で内緒話をする。
「ちょっとヒナタ。なんかまずくない?」
「コウさま、なにかひらめいちゃったみたいだな……」
「そんな悠長なこと言ってる場合? ヒナタに恋しちゃっているらしいのよ」
コソコソとヒナタの耳元で囁くと、数秒置いたあとヒナタは青ざめて「マジ?」とヒヨリを見つめた。
ヒヨリがコクリと頷くと、ヒナタは救いを求めた。
「ってか、ヒナタが好きっつったって偽ヒナタを好きになったってことだろ?」
「……うっ」
「お前、どんなヒナタ演じてたんだよ。なんか色々この数ヶ月間探っていたけど、なんかめちゃくちゃアイドル化してたぜ? 偽ヒナタ」
「ア、アイドル!?」
一体どうしてそうなったとヒヨリが理解に苦しんでいると、ヒナタは盛大にため息をついた。
「ヒヨリ、どんな執事してたんだよ」
「ど、どんなって……」
ジトッとヒヨリを睨むヒナタに、ヒヨリはたじろぐ。
決して目立たないよう、それでもヒナタの偽者らしく、ヒナタならこの場面どんな行動にでるか、ヒナタならどんなことを言うか。
そんなことばかりを考え、この数ヶ月間コウの執事、霧島ヒナタとしてやってきた。
アイドル化しているといわれても困ってしまう。