執事ちゃんの恋
「そっか……」
こうなるであろうということは、だいぶ前からわかっていたことだ。
わかっていたことだが、割り切れるかといえば否だ。
ヒヨリは、ギュッと健が用意してくれたドレスを握り締めた。
どうあがいたって健の隣には立てないんだよ、とあざ笑われているように感じてヒヨリは一人俯く。
そんなヒヨリの様子は、双子の兄ヒナタには何もかもお見通しだ。
ヒナタは、優しくヒヨリの背中を擦った。
「色々……うまくいかないもんだよな」
「……」
「本当、家のしがらみってやつは……めんどくさいな」
「激しく同意する」
こっそりと苦笑しあっていると、やっと一人ブツブツと考え込んでいたコウが我にかえったように二人に近づいてきた。
「ちょっと二人とも。なにをコソコソと話しているのかしら?」
「いえ、久しぶりに妹に会えたので積もる話がございまして、ね?」
「あ、うん。そうなんです、コウさま」
ヒナタに話を振られ咄嗟に取り繕って返事をするヒヨリに、コウは意味ありげに微笑んだ。
「ねぇ、ヒヨリ」
「は、はい……なんでございましょうか?」
「ヒヨリは、私の味方よね?」
上目遣いで、瞳を潤ませながらヒヨリを見つめるコウ。
その容姿があまりにも可愛くて、ヒヨリは思わず抱きしめたくなってしまった。
ギュウギュウ抱きしめて、いい子いい子したい。
思わず手を伸ばしてしまいそうになるのをグッと堪えて、目の前のコウにほほ笑んだ。