執事ちゃんの恋





「もちろんでございますよ」


 今は、執事ではなく“霧島ヒヨリ”といういでたちだが、霧島家が文月家に絶対の主従関係だというのは周知の事実。
 それに、ヒヨリとてコウはもう、立派なご主人様なのだ。
 すぐに大きく頷くヒヨリを見て、コウは安心したように安堵のため息を零した。


「よかった。ヒヨリが味方になってくれたら百人力だわ」


 その安堵した様子も可愛らしく、ヒヨリが瞳を細めて見守っているとコウは視線をヒナタに向けた。

 そして、そこには文月家当主の一人娘である、最強のお嬢様のオーラを纏いを笑みを浮かべた。


「ヒナタ」

「はい、なんでございますか。コウさま」


 執事らしく振舞い、頭を少しだけ下げたヒナタにコウは高らかに宣言した。


「命令よ」

「は?」


 突然のコウの変貌についていけないヒナタは、目を丸くしてコウを見つめる。
 その視線を感じたのだろう。

 コウは表情を変えず、ツンとすましてヒナタを指差した。



「私と結婚しなさい」






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