執事ちゃんの恋
第25話
第25話
「……えっと、コウさま?」
ヒナタの声が戸惑いに揺れている。
目を大きく見開き、唇は小刻みに震える。
一方、傍にいたヒヨリは突然のコウの命令に言葉がでない。
ただ一人、コウだけがフンと鼻息荒く仁王立ちし、腰に手を当てている。
さきほどまで深窓の令嬢を演じていたコウだったが、それも形無しである。
しかし、その表情からはとても先ほどの命令が嘘だとも冗談だとも思えないほどの真剣さだ。
参った……。
ヒヨリとヒナタは心の中で大きくため息をついた。
チラリとヒヨリとヒナタはアイコンタクトをする。
――― ちょっと、コウさま。本気みたいだよ、どうするの?
――― どうするったって、どうしようもないだろう。
どう考えても、いい案が浮かばず言葉ができない二人の背後から、やっと救いの神が現れた。
「おや、どうしたんだい? コウ」
「あ……健くん」
今まで張り詰めていた空気が、フッと軽いものに変わった。
内心、ヒヨリとヒナタは胸を撫で下ろし、やっと現れた救世主に視線を向ける。