執事ちゃんの恋
第26話
第26話
「……で、どこに潜伏していたんだい? ヒナタ」
「どこって……というか、健先生。その恐ろしい笑顔をまずはひっこめてくださいよ」
黒いオーラを纏い、ありえないほどの笑みを浮かべる健にヒナタは思わず顔を引き攣らせた。
そんなヒナタの言葉になどおかまいなしとばかりに、ますます笑みを深め、漆黒すぎるオーラを漂わせる健に、ヒナタは肩を竦めるしかできなかった。
パーティーも無事終了し、やっとコウを部屋に連れて行き、ほかの使用人に託して健が借りているホテルの一室に行けば、恐ろしい笑みを浮かべた健が手招きをしていた。
正直そのまま回れ右をして部屋を出てしまいたかった。
だが、そういうわけにもいかないだろう。
今、逃げたとしてもあとで追いかけられる。そういうことだ。
ヒナタはこっそりとため息を零した。
健の隣に座らされているヒヨリは、萎縮して縮こまっている。
ヒナタがくるまでの間、健の質疑に答えていただろうことは予想できる。
ぐったりと疲れた様子のヒヨリを見て、次はわが身とヒナタは身体を震わせた。
「とりあえず、ここに座りなさい。ヒナタ」
「……はい」
健が座っている真向かいのソファーを指差し、促している。
もう、どうやっても逃げることはできないらしい。
ヒナタは、苦笑を浮かべながらソファーに腰を下ろす。