執事ちゃんの恋
「色々聞きたいことはたくさんあるんだけどね……」
「……」
ジロリと健に睨まれて、ヒナタはいたたまれなくなって肩を竦む。
一方のヒヨリは、その場の雰囲気に我慢できなくなったのだろう。
ひとり腰をあげ、コーヒーを準備しだした。
ーーー ヒヨリ、逃げるなよ。
ヒヨリに視線を向け、意味ありげにほほ笑むと、ヒヨリは、あははとから笑いをした。
どうやら逃げれるものなら逃げるつもりだったらしい。
そうはさせるかと、ヒナタはヒヨリを睨みつける。
ヒクヒクと顔を引き攣らせたヒヨリは、コーヒーをそれぞれの前に置いたあと、再びソファーに腰を下ろした。
それを確認してから、ヒナタは健をまっすぐに見つめる。
なんでも聞いてください、と両手を挙げ、降参のポーズをとる丸腰のヒナタに健は意味ありげにほほ笑んだ。
「ヒナタはこの数ヶ月どこにいたんだい? ヒヨリに執事を押しつけて」
「押しつけって……まぁ確かにそう見えるかもしれませんけど、これに関してはヒヨリと利害は一致していますので健先生にとやかく言われる理由はありませんね」
「……その内情は私にはわからないが、今回の入れ替え劇は利害は一致していたかもしれない……だが付け焼刃だとは思わないかったかい?」
「……」
押し黙ったヒナタ、そしてすぐ傍にいるヒヨリ、ふたりに健は視線を投げかけた。
「そのことに関しては……今はおいて置いて」
「……はい」
「ヒナタはどこで何をしていたの? ヒヨリも……知らなかったんだよね?」
はい、とヒヨリもヒナタに興味津々な視線を向けた。
ヒヨリのその態度にプッと噴出したあと、ヒナタはコーヒーを一口飲み、なんでもないとばかりにサラリと居場所を口にした。