執事ちゃんの恋
「ずっと文月家にいましたよ?」
「……」
無言のまま顔を見つめあう健とヒヨリ。
なにやら視線で会話したあと、二人は視線をヒナタに戻した。
そして、健はもう一度ヒナタに問いかけた。
「ヒナタ、もう一度聞くよ?」
「はい」
「この数ヶ月間。ヒナタはどこに居たって?」
疑問符が浮かんでいるであろう健とヒヨリを交互にみたあと、ヒナタはにっこりと笑った。
「ですから、文月家にずっといましたよ?」
「ちょ、ちょっと! ヒナタ。どういうこと?」
身を乗り出してヒナタの胸倉を掴み、ユサユサと揺するヒヨリを止めながら健はヒナタに問う。
「文月家にって……」
「はい。文月家の清掃スタッフとして紛れ込んでました」
「……」
「変装はしていたんですけど、なかなかバレないものですね」
あはは、と笑うヒナタをヒヨリはあっけにとられながら掴んでいた胸倉を離し、ソファーにドカッと座った。
「どこにいたかと思えば……そんな近くにいただなんて。お父様も見つけられないって青ざめていたのに」
「灯台下暗しってね。意外とみつからないもんだよね」
ヒナタは、二人の様子がおかしかったのだろう。
クスクスと笑いながら、腕組みをする。
「そこでずっとヒヨリのこと見守っていたんだよ」
「……だから、今日」
「そう。今日パーティーが行われるのも知っていたし、そのことでヒヨリが窮地に追い込まれていることも知っていたってわけ」
「……」
「颯爽と俺が現れたのは、そういうからくりがあったってわけさ。理解していただけました?」
ヒナタは健にそう言って笑うと、健はフフッと楽しげに笑った。