執事ちゃんの恋
第27話
第27話
「ヒヨリには、なんでもっと早く俺の居場所を教えなかったのかと怒られてしまいましたが、村岡美紗子の尻尾を捕まえるために、わざと居場所を教えなかったんです」
「え……それってどういうこと?」
「彼女の父親の会社、村岡物産が文月家と縁故になりたいと水面下で再び動き出したことをキャッチしたので、ずっと見張っていたんですよ」
ヒナタの言葉を聞き、健ではなくヒヨリがいち早く反応した。
そんなヒヨリに優しくほほ笑み、ヒナタは窓に背を預け、長い足を交差させ腕組みをする。
「健先生は、彼女のことをかなり信用していたようでしたが……俺はそうとは思わなかった。そういうことです」
「……」
無言のままヒナタの言葉に耳を傾ける健を見て、ヒナタはため息を零す。
「案の定、今日このパーティーで仕掛けてきた」
「……」
「ヒヨリが健先生の横にいる、ということは霧島ヒナタはその場にいない。大手企業や著名人が揃うこのパーティーで、そしてなによりお嬢様であるコウさまの前で、ヒナタに会いたいと言った」
「美紗子が……」
絶句した健に、ヒナタは無表情で深く頷いた。
「彼女は健先生から偽ヒナタのことを聞いていた。だから、この暴挙にでることができた。そうですよね?」
「……そのとおりだな」
健は、参ったと大きくため息をつきながら天井を見上げる。
それを心配そうに見つめながら、ヒヨリは「そういえば……」とさきほどのパーティーのときのことを思いだし呟いた。