執事ちゃんの恋
「そう、霧島ヒヨリっていう小娘らしいよ」
「っ!!」
「それを聞いて、栄西さまも慌てたらしいね。だから、ヒヨリと面識があって家柄などもクリアした詠二先生に白羽の矢がたったってわけ。これが突然縁談が組まれた最大の理由」
「……」
「詠二先生なら、ヒヨリも納得するだろうと思ったんだろうね。確かに詠二先生はいい男だもんな」
とにかくさ、とヒナタはポンとヒヨリの頭をゆっくりと撫でた。
「文月家の運命と健先生の幸せのため、ヒヨリの未来のために、ぶち壊して来い」
「ヒナタ」
「これは文月家当主の愛娘であるコウさまのたっての希望であり、命令だ」
「……」
黙りこくったまま俯くヒヨリに、ヒナタは口調を強めて言う。
「我らの主である、お嬢様の命令は絶対だ。それともヒヨリにとって直接のご主人さまは栄西さまか?」
弾かれたように顔をあげたヒヨリは即答した。
「……違う、コウさまよ」
ヒヨリはグッと唇を結び、店の二階を睨みつけた。