執事ちゃんの恋
「知らなかった……そのときはどうしたんですか?」
好奇心を抑えながらヒヨリは健の顔を覗き込んだ。
それに答える形で、健はまっすぐとヒヨリの瞳を見つめた。
「霧島の長男を文月家の女子のところに婿養子に呼んだんです」
「って、ことは……辿れば、文月家と霧島家は血縁関係ってこと?」
「そのとおり。だからね、ヒヨリ」
「へ?」
「文月と霧島の血が交じり合うことは、あってもいいということなんです」
「健せんせ?」
本当にそんなことがあったというのだろうか。
初めて聞かされることに、ヒヨリは胸がどきどきと高鳴った。
もし、それが本当だとしたら。
もし、それが可能だとしたら。
その答えはすぐに健の口から明らかになった。
「ヒヨリが、私の妻になるということは可能なんですよ」
「っ!」
「無理な話ではないし、もし無理だと兄さんが言ったとしても有無を言わさず実行してみせますよ」
健は手を伸ばし、ヒヨリの手を掴んだ。
ギュッと握ってヒヨリを見つめる健の瞳は、情熱と愛情と、それからある種の熱を感じた。
ドキンと胸を高鳴らせ頬を染めたヒヨリに、健はクスリと意味ありげにほほ笑んだ。
「ヒヨリを妻にもらうことができないのなら、文月家を継ぐことはありませんってね」
「うわぁー相変わらず悪魔……」
「なんとでも」
ニヤリと口角をあげ笑う健の表情は、本当に悪魔のようでヒヨリは肩を竦めた。