執事ちゃんの恋
第41話
第41話
「まったく、どう考えたら私が美沙子のことが好きだと解釈できるんだろうね」
「だ、だって!!」
ヒヨリは、真っ赤な顔をしてそっぽを向く。
ブツブツと小言を呟くヒヨリを健は片手で抱き寄せた。
あのあと、喫茶 櫻からまっすぐに向かったのはヒヨリの乙女部屋があるマンションだった。
健は、我が物顔で自分のジャケットのポケットから鍵を出し、当然のように扉を開けた。
そして向かう先は、乙女部屋で一番ラブリーな仕様になっているベットルームだ。
淡いピンクと白を基調とした部屋に、天蓋つきのベット。
そこにヒヨリを座らせた。
甘い雰囲気に流されそうになったが、ヒヨリは別のことが気がかりだった。
それは抜け出してきてしまった結納の席のことだ。
あの場には、文月家当主である栄西もいて、なにより詠二もいた。
ヒヨリのことを思って、断ろうと思っていた縁談を引き受けてくれた詠二に迷惑をかけてしまったのではないか。
そのことが頭から離れない。
健と想いが通じ、甘い気持ちに浸っていたが、自分が今、振袖姿だということを思い出し、そして芋づる式で結納のことを思い出した。
今は乙女部屋に逃げるのではなく、もっと違うことをしなくてはいけないのではないだろうか。
まずは、料亭 九重に戻り、栄西と詠二に心の底から謝ることをしなければならないだろう。
ヒヨリは意を決して健に相談をしようとすると、そんなヒヨリの気持ちなどお見通しとばかりに健はクスッと笑った。
「そうそう、忘れないうちに言っておくけど、詠二さんは協力してくれただけだから。心配しなくていいですよ」
「へ?」
驚いて目を大きく見開くヒヨリを、健はより自分に近づけるようにヒヨリの頭をかき抱いた。