執事ちゃんの恋





 帯を緩めながら、健はヒヨリの耳元で囁いた。


「また敬語に戻っちゃっているけど、二人きりのときは……今までのヒヨリがいい」

「健、せんせ……」

「エッチのときに敬語っていうのも、なかなか興味深いけど」

「ば、バカ! な、何言ってんのよ!」


 ギョッと顔をしかめれば、健は目じりに皺を寄せた。


「そう、その調子。いつものヒヨリがいい」

「ん! ……ハぁ……ん」


 袂をグイッと開かれ、胸元に唇が這う。

 ときおり強くキツく吸われ、赤い痕が軌跡のように残っていく。
 健はそれに満足しながらスルスルと帯を解き、着物を脱がしていく。
 その間も、健の手は、指は、唇は止まらない。


 甘い痺れに、ヒヨリはすでに力なくベットに沈んでいる。
 ただただ、幸せな時間に身を任せておきたい。


 一糸まとわぬ身体で、ヒヨリは健を抱き寄せた。


「健せんせ……大好き」


 一瞬ビクリと反応したあと、健は「いい度胸ですね」と不敵に笑った。


「もう、離しませんよ。もちろん、朝まで」

「え?」


 そのあとのヒヨリの抗議は、甘くて深い口づけで掻き消された。










 
< 197 / 203 >

この作品をシェア

pagetop