執事ちゃんの恋
帯を緩めながら、健はヒヨリの耳元で囁いた。
「また敬語に戻っちゃっているけど、二人きりのときは……今までのヒヨリがいい」
「健、せんせ……」
「エッチのときに敬語っていうのも、なかなか興味深いけど」
「ば、バカ! な、何言ってんのよ!」
ギョッと顔をしかめれば、健は目じりに皺を寄せた。
「そう、その調子。いつものヒヨリがいい」
「ん! ……ハぁ……ん」
袂をグイッと開かれ、胸元に唇が這う。
ときおり強くキツく吸われ、赤い痕が軌跡のように残っていく。
健はそれに満足しながらスルスルと帯を解き、着物を脱がしていく。
その間も、健の手は、指は、唇は止まらない。
甘い痺れに、ヒヨリはすでに力なくベットに沈んでいる。
ただただ、幸せな時間に身を任せておきたい。
一糸まとわぬ身体で、ヒヨリは健を抱き寄せた。
「健せんせ……大好き」
一瞬ビクリと反応したあと、健は「いい度胸ですね」と不敵に笑った。
「もう、離しませんよ。もちろん、朝まで」
「え?」
そのあとのヒヨリの抗議は、甘くて深い口づけで掻き消された。