執事ちゃんの恋
最終話
最終話
「ってか、なんでそんな話になるわけ!?」
「ん?」
ふんぞり返ってソファに座り、不機嫌な表情でコウは健を見つめた。
が、一方の健はそんなコウの不機嫌オーラたっぷりの視線を浴びても素知らぬ顔だ。
健のその態度にキレたのはコウのほうだった。
「ん? じゃない! 健くんはさ。ヒヨリと結婚が決まって嬉しいかもしれないけど、人にその幸せを押し付けるようなことはしなくて結構よ」
ヒナタ、お茶! と湯呑をバンとテーブルに置く。
その仕草だけでも、コウがどれほど怒っているのか見当がつく。
それなのに、健のほうはそれをどこか面白がっている様子だ。
二人のやり取りを見て、ヒヨリは肩を竦めた。
栄西にセッティングされた結納の日から、一週間。
健の行動は素早かった。
栄西に、村岡は危険だから距離を置いたほうがいいということを忠告した。
ヒナタからある程度聞いていた栄西は、健の忠告に異議を唱えることはなかった。
が、栄西としては村岡との縁組は諦めた様子だったが、ヒヨリと詠二のことについては最後まで渋った。
「最初は村岡に言われてヒヨリに縁談を勧めたけど、そろそろヒヨリに婚約者がいたっておかしくないだろう。それに詠二くんも立派な青年だし、ヒヨリも顔なじみ。これほどいい縁談はない!」
栄西がそう断言したあとの健の表情がものすごく怖かった。
周りにいた人間、誰もが空気が凍りつくのがわかり顔を引き攣らせた。
「ヒヨリにいい縁談? それなら私にこころあたりがありますよ」