執事ちゃんの恋
「この人だかり。これ全部ヒナタのせいだから」
「……は?」
意味がわからないとばかりにコウを見つめる。
フンと鼻で笑いあしらいながら、コウは彼女たちをギロリと睨みつけた。
が、ギャラリーの賑やかさは増すばかりだ。
それを見てコウは、ガックリと肩を落とした。
「彼女たちが騒いでいるのはヒナタが来たからよ!」
「まさか」
ヒヨリはコウの言葉が信じられなかった。
一介の執事に、何故このような人だかりができるというのだろうか。
理解に苦しむヒヨリをチラリと見たあと、コウはやけっぱちとばかりに口を開く。
「ヒナタがカッコイイからよ」
「は?」
「冴島が送り迎えしているときは、こんなことになったことないもん」
「……まさか」
コウに言われて改めてギャラリーの声を聞くと、どうやらヒヨリのことを見て騒いでいるようだ。
やっとこの状況は自分のせいだということを把握したヒヨリの様子を見て、コウは改めて命令をする。
「だからヒナタは、もうここに来ちゃだめ」
「いえ、それはできません」
「ダメ! 絶対にダメ! 私の命令が聞けないの?」
「っ!」
主に命令といわれてしまえば、それ以上は何もいえない。
腑に落ちなくて顔を歪めるヒヨリに、コウは真っ赤になって呟いた。