執事ちゃんの恋
第7話
第7話
『久しぶりだな、ヒヨリ』
『お父様』
携帯に電話をかけてきた人物が自分の父だとわかったヒヨリは、あとでかけ直すと伝えたあと車に乗り込み、ロータリーから遠ざかる。
女学館の駐車場まで移動し、車を停めたあとヒヨリは父に電話をかけた。
この電話の意味すること。
それは、きっとヒナタが見つかったという知らせなのだろう。
ヒヨリは覚悟をして父の言葉を待つ。
短い間だった。
文月家に来てから、まだ2週間もたっていない。
確かに、霧島家の包囲網を狭めていけば、ヒナタのかくれんぼなど簡単にみつかることぐらいわかっていたが、それにしても短かった。
もう少し、もう少しだけ。
健のことを忘れる時間がほしかった。ヒヨリは、こっそりとため息を零した。
そうはいってもヒヨリもヒナタもお互い収まるところに収まったほうがいい。
そう神が判断したのだろう。
覚悟はしていた。
健に抱かれた夜にヒヨリはすべて覚悟をしていた。
これが最後。健と笑顔で会えるのもこれが最後なのだから、と。
そして次に会うときは、結婚して人妻となってからだ、と。
悪あがきもここまで、ということだ。
ヒヨリもそして、ヒナタも。
次の言葉を言い出さない父、宗徳に痺れを切らしてヒヨリから持ち出した。