執事ちゃんの恋
『……それで、ヒナタは見つかりましたか?』
ヒヨリの言葉を確かに聞いていたはずなのに、宗徳からの返事は来ない。
不審に思い眉を顰めていると、困ったような雰囲気で宗徳が口を開く。
『見つからん』
『……は?』
宗徳の言葉が信じられなかった。
少しの沈黙のあと、宗徳は声を絞り出すように呟いた。
『あのバカ者が。どこに行ってしまったのか。見当もつかん』
『……ヒナタ』
ヒナタの飄々とした様子を思い出す。
どうやらかくれんぼは今だ継続中だということらしい。
やっぱりヒナタは相変わらずのようで、どこかに潜伏しているということなのだろう。
ヒヨリは、少しだけ自分のタイミリミッドが長引いたことに安堵する。
しかし、とヒヨリは首を傾げる。
ヒナタがどこに潜伏してかくれんぼをしているのかも気になるところだが、気になるといえばこの電話。
宗徳からの電話だ。
てっきりヒナタが見つかったから、近々入れ替われという話しだと思っていたのだ。
しかし、ヒナタは今だ潜伏して見つかっていないという。
それでは、何故……宗徳はヒヨリに連絡をしてきたというのだろうか。
あれこれ考えていたヒヨリに宗徳はポツリと呟いた。
『……苦労しているだろう』
『え?』
『ヒナタとお前はそっくりだ。親の私も間違えてしまうことがあるくらいだ。しかし……』
フゥと小さく息を吐き出したあと、霧島家本家当主としてでなくヒヨリの父親としての声色で呟いた。
『お前は女だ。男の真似事はときにストレスとなるだろう』
『お父様』
『そうでなくとも……お前は見た目はクールに見えるが、中身はがっつり乙女だからなぁ』
『……』
クツクツと笑う宗徳に、ヒヨリは顔を顰めた。
宗徳は、ヒヨリの趣味を知っている数少ない人物のひとりだ。
何が言いたいのかわかったヒヨリはますます眉間の皺を深くする。