執事ちゃんの恋
高級マンションの最上階。
予想はしていたが、やはりエレベーターの扉が開くと、そこには一部屋しかないようで扉はひとつしかない。
「このカードキーはヒヨリさまにお預けしておきますね」
部屋の施錠をあけると、ヨネはすぐさまそのカードキーをヒヨリの掌の上に乗せた。
「エレベーターに乗り込みましたら、こちらのカードキーをスキャンなさってください。そうすればこちらの階に到着いたします」
「……」
「裏を返せば、このカードキーがなければこの最上階まではたどり着かない仕組みになっております」
「は、はぁ……」
さぁ、どうぞとヨネはヒヨリにスリッパを差し出して、自分はスタスタと部屋の奥へと入っていく。
ヒヨリも慌てて靴を脱ぎ、スリッパをはいてヨネのあとを追う。
ヨネはひとつの部屋の扉を開けた。
たぶんリビングと呼ばれる部屋なのであろう。
ヒヨリはその部屋に一歩踏み入れて思わず感嘆の声をあげた。
「うわぁぁ!!」
グルリと見渡しながら興奮気味に部屋を見つめるヒヨリに、ヨネは満足そうに微笑んだ。
「どうでございますか? ヒヨリさま」
「す、す、ステキなんだけど!! これはいったいどういうことなの? ヨネ」
ヒヨリの視界に広がったのは、広いリビング。
だが、ただのリビングではない。
お姫様にでもなった気分になれるほどの世界だった。
ピンクの壁紙に、カーテンももちろんフリルでいっぱい。それも白レース。
テーブルだって猫足の可愛らしいものだし、ソファーにいたってはハートの形のクッションなども置かれてある。
その空間は、ヒヨリが大好きな姫グッズで埋め尽くされていた。
ドキドキする胸を押さえながら、ヒヨリは夢見心地でヨネを見つめた。
「ねぇ、これは?」
「ここはヒヨリさまのお城ですよ」
「わ、私……の?」
ええ、と深く頷いたあと、あっけにとられているヒヨリの顔を嬉しそうに見つめながら言う。
「旦那さまからのプレゼントです」
「お父様からの?」
「はい、ヒヨリさまが毎日無理をしていないか、ずっと心配なさっていたので私、言ってやりましたの」
胸を張ってヨネはすました。